EXPLACE / PROPOSAL — GOAL BACKCASTING — v1.1

提案文|ゴール逆算設計

ISのトークスクリプトと同じ骨格で提案文を組みます。ゴールを先に定義し、成立条件に分解し、逆算チェーンの一番下から積む。電話が「本アポ」を目指すのに対し、提案文が目指すのは「本商談」です。返信が来たことは成功ではありません。パターンが違っても変わるのは2つだけ——この提案で出す事実と、次に渡す成果物です。

01

ゴールの定義

まず、何をもって「取れた」とするかを決めます。ここが曖昧だと、返信が来た数を成果と数えてしまい、失注の原因が永久に分かりません。

提案の獲得とは、発注者が自社固有の未検証の論点を受け取り、次にそこで何が手に入るかを理解した上で、自分の意思で現物を出し(サイトURL・Excel・断った案件の内容など)、商談日程が確定し、当日それが実施された状態を指す。

不成立

返信が来ない。または「他社に決まりました」で終わる。課題の話に一度も入れていない。

「今回は見送らせていただきます」

相見積もり枠

返信は来たが、比較表の1行として扱われている。来るのは金額と納期の質問だけ。自社の課題とは結びついていない。決まるのは価格。失注の実体はここ。

「概算のお見積もりだけ先に送ってください」

本商談

自社の課題と、次に受け取る成果物が結びついている。相手が現物を出してきている。日程は自分のために入れている。

「そのメモ、見たいです。Excelお送りします」

日程が入った時点ではなく、実施までをゴールに含めます。商談当日のドタキャン・無断欠席は失注ではなく、この定義を満たしていなかったという結果です。同じく、返信が来ても金額の照会しか来ないなら、それは「相見積もり枠」であって獲得ではありません。
02

意思決定の成立条件 — 5つ

上のゴールが成立するために、順番に満たさなければならない条件です。1つでも欠けると、以降にどれだけ良い情報を書いても届きません。左が満たすべきこと、右が満たさなかったときに起きることです。

危険な相手ではない誰が・何を・なぜ

冒頭3行で「一斉送信された営業文ではない」と分かること。使えるのは3行。ここが埋まるまで、相手は内容を読んでいません。

▲ 欠けると:以降の全文が、目で追われるだけの文字になる。

出口を渡していない読む/読まないを選ばせない

「ご興味があれば」「ご検討ください」「まずはお見積もりを」は、相手に切る判断を促す出口です。用件は言い切り、そのまま質問に進みます。

▲ 欠けると:内容ではなく「今それをやる予定があるか」だけで結論が出る。

自分の話をしてしまっている当事者化

返信で相手が自分の言葉で現状を1行でも書いた瞬間、会話は「業者の選定」から「自社の相談」に変わります。そのための質問2つと、現物の提出依頼。

▲ 欠けると:他人事のまま「社内で検討します」で終わる。

知らなかった論点がある情報の非対称性

その会社について、担当者よりこちらの方が知っている点を1つ検証可能な事実に限ります。一般論(「今はDXが重要です」)や意見では成立しません。

▲ 欠けると:「へえ」で終わる。会う理由が発生しない。

次にそこで何が手に入るか成果物の確定

「一度お打ち合わせを」の30分は、相手にとって手ぶらで終わる時間であり、社内の優先度は最下位になります。何を持っていくかを名指しすること。ここが提案文における無償価値(B7)の役割です。

▲ 欠けると:日程は入るが相見積もり枠止まり。当日キャンセル、または金額だけ聞かれて終わる。

5つの条件と、発注者が実際に見ている3軸

相見積もりの現場では、発注者の判断は①類似実績があるか ②費用感 ③営業担当の対応の3つに収束します。上の5条件は、この3軸を満たすための手順です。対応は次のとおり。

条件内容満たす軸関係
危険な相手ではない③営業対応一斉送信でないと分かること自体が、対応品質の最初の証明
出口を渡していない③営業対応「ご興味があれば」は、判断を相手に丸投げした状態に読まれる
当事者化③営業対応 + ①実績質問の的確さが、同種の案件をやった証拠として読まれる
情報の非対称性①類似実績失敗の構造を先に言えることは、事例を並べるより強い再現性の証明になる
成果物の確定②費用感 + ③営業対応先に工数を払う姿勢と、金額が決まる構造の提示がセットで②を満たす
最も重要な禁止事項:案件情報を見たまま金額を提示しない。相見積もりで受注できている会社に共通するのは、要件どおりに見積もって返さないことです。背景を読み取り、潜在課題を読み取り、初回に何を確認するかまで提案に書く。見たまま出した金額は根拠がないため、相手が社内に持ち帰った瞬間に崩れ、以降はその数字だけが比較表に残ります。②費用感は、金額ではなく金額が決まる構造といつ確定するかで満たしてください。
03

逆算チェーン

下から順に積み上がります。いちばん下がなければ、上の全ての段は成立しません。文章力ではなく、送信前に調べたかどうかで、その提案の上限が決まります。

本商談が成立し、当日実施される 成果物への期待がある 次に受け取るものが、具体的に名指しされている 会う理由が発生している 自社について、知らなかった論点を1つ受け取っている その論点が刺さる状態になっている 相手が自分の課題を、自分の言葉で書いている 質問に答えてもらえる/現物を出してもらえる 警戒が解けている(誰・何・なぜ)+ 出口を渡していない 最後まで読まれている 提示する「検証可能な事実」を1つ持っている 送信前に、その会社を実際に調べているサイト/求人票/実績ページ/口コミ/マップ/IR・プレス/案件文そのもの 下から積む 条件⑤条件⑤ 条件④条件③ 条件①②条件④の材料
FIG.A — 提案文の逆算チェーン。茶色の2段(③当事者化・④情報の非対称性)が、相見積もり枠と本商談を分ける分岐点。
準備なしで書いた提案の上限は「相見積もり枠」です。調べていない状態で書けるのは一般論だけで、一般論は条件④を満たさないため、チェーンが途中で切れます。金額と納期の比較表に入れられ、そこから先は価格でしか勝てません。調べる時間が取れないなら、その案件は応募しない方が、時間あたりの成果は上がります。
04

骨格と対応表 — 電話・提案文・市場分析をつなぐ

ISのフェーズ0〜6、提案文の7ブロック、成立条件の5つは、同じものを別の角度から呼んでいます。対応が分かれば、電話で効いた改善をそのまま提案文に移せます。

フェーズ電話(IS)提案文満たす条件提案文での具体
0事実の準備事実の準備④の材料サイト・求人票・実績ページ・口コミ・案件文を見る。合格基準を各ペルソナに定義(§05)
1受付突破件名・冒頭1行案件名や社名を具体的に含める。「ご提案」「ご挨拶」は開かれない
2警戒解除B1 ミラーリング①②相手の言葉のまま復唱。所要時間や「ご興味があれば」は書かない
3当事者化B2 背景仮説 + B7 質問2つ断定形で状況を2〜3点。質問は2つまで。現物を1点だけ求める
4ギャップ提示B3 潜在課題 + B5 証拠未検証の論点を1つだけ。3つ書くとダメ出しになり相手が防御に回る
5成果物と日程B4 進め方 + B4′ ヒアリング項目 + B7 無償価値⑤③次に渡すものを名指し。最初の1歩を決裁が要らない大きさに。初回に確認する4〜5点を先に書くと、③営業対応が文面だけで証明できる
6固定B6 費用 + CTA金額はレンジ+振れる理由。次アクションは相手の作業1分以内

マクロ分析から、ここへ入ってくる

『営業ナレッジOS』の市場マップ(§02)とペルソナ(§03)が、この設計書の入力です。板が決まるとペルソナの候補が絞れ、ペルソナが決まると調べる場所出す事実渡す成果物が一意に決まります。

板(市場)主なペルソナ事実をどこで拾うか次に渡す成果物
比較ビズ/ミツモア/クラウドソーシングP-01サイト・スマホ表示・Google口コミ・求人票離脱箇所メモ1枚
発注ナビ/比較ビズP-02案件文の内部矛盾・業種の定番業務Excel1本の作業分類表
発注ナビ/紹介/ABMP-03採用ページの技術スタック・IR/中計・EOL情報移行リスクの棚卸し1枚
二次請けアウトバウンド/専門ポータルP-04実績ページの事業構成・直近案件の傾向断った案件1件の体制・原価設計
紹介/ウェビナー/自社HPP-05プレスリリース・採用票・事業フェーズ検証設計1枚
Upwork/LinkedInP-06ストアの日本語レビュー・日本語サイトの訳日本語UIの問題点1枚
05

ペルソナ別 設計 — 変わるのは2つだけ

ゴール・成立条件・チェーン・骨格は全ペルソナ共通です。変わるのは「出す事実」と「渡す成果物」の2つだけ。タブを切り替えて、対象のペルソナのフェーズ0から順に読んでください。フェーズ0の合格基準を満たしていない場合、その提案の上限は相見積もり枠です。

個人事業主〜社員5名のオーナー。決裁者は本人なので即決に近い一方、判断材料が「価格」と「感じの良さ」に寄りやすい。事実で殴らず、事実で心配を作るのが要点。比較ビズ/ミツモア/クラウドソーシング

この提案で出す事実

「〔社名〕で検索した人が最初に見る画面に、〔電話番号/営業時間/料金の目安〕が出てこない」など、本人が自分では見ていない自店の見え方を1つ

次に渡す成果物

現状サイトと求人票を突き合わせた離脱箇所メモ1枚(指摘3点+直す順番)。自社工数40分

本商談の成立サイン

サイトURLか求人票を自分から送ってきた/「集客と採用、どっちを先にやるべきか」と聞いてきた

相見積もり枠に落ちるサイン

返信が「いくらでできますか」「他社さんは〇〇円でした」だけ。この時点でチェーンの③④が切れている

発注者の判断軸 — 優先順位③営業対応 > ②費用感 > ①類似実績 / Web制作の実績はどの候補も持っている。決め手は「話が通じるか」と「追加費用が出ないか」。専門用語を使わず、初動を速くし、B6で振れる理由を先に開示する
このペルソナで最も崩れるのは条件④。「今はSEOが重要です」「スマホ対応は必須です」は一般論なので、他社の提案文と完全に同化します。その店・その会社を実際に開いて、そこでしか言えないことを1つ持つまで書き始めないでください。
0

事実の準備

4点だけ見る。深追いしない

① スマホで自社サイトを開き、最初の画面に何が出るか ② Googleの口コミ件数・最終投稿日・返信の有無 ③ 求人を出している場合、求人票の内容とサイトの記載が一致しているか ④ 「〔エリア〕+〔業種〕」で検索したときの順位

合格「御社のサイトは、スマホだと最初の画面に◯◯が出てこない」と社名入りで1文言い切れる

1

件名・冒頭

「ご提案」「ご挨拶」は開かれない。案件名+気づいた点を入れる

〔案件名〕の件/サイトを拝見して1点お伝えしたいことがあります
2

B1 ミラーリング — 警戒解除

相手の言葉のまま1文で復唱。ここで所要時間や「ご興味があれば」を書かない

◯◯様 〔サイトをリニューアルして、採用にも使いたい〕という件で拝読しました。

通過2行目まで読まれる。一斉送信でないことがここで伝わる

3

B2 背景仮説 — 当事者化の準備

断定形で2〜3点。「〜ではないでしょうか」を連発しない。当たると以降の信用度が変わる

■ 背景として想定していること ・求人媒体には出しているが、応募が月1〜2件で止まっている ・応募者は媒体を見たあと、必ず社名で検索してサイトを見ている ・面接前の辞退が出ている
4

B3 ギャップ提示 ★中核

穴は1つだけ。3つ書くとダメ出しの手紙になり、相手が防御に回る

まず、集客と採用のどちらを先に立てるかで、作るものが変わります。今回は採用が先だと読みました。 そのうえで御社のサイトを拝見したのですが、スマホで開いたときに最初の画面で〔◯◯〕が分からない状態でして。応募を迷っている人がここで離脱している可能性が高いと考えています。デザインを新しくしても、応募数はここが直らない限り動きません。

通過「そこ気にしてなかった」「うちは集客の方かも」——自店に言及し直したら成立。訂正が返ってきた場合も成立

5

B4 進め方 + B5 証拠

「作って終わり」への不安を工程で消す。実績は1つだけ

■ 進め方 1週目:今のサイトと求人票を突き合わせ、離脱箇所を特定 2〜4週目:構成と原稿 5〜8週目:制作・公開。公開後1ヶ月は応募数を一緒に見ます ■ 近い実績 採用サイトで同じ構成変更を行い、公開から3ヶ月で応募27件。求人媒体への支払いは増やしていません。
6

B6 費用 + B7 成果物と次アクション

金額より「何で増えるか」を先に言う。次アクションは相手の作業1分以内

■ 費用 40〜60万円。振れ幅は、現場写真の撮影を入れるかと、求人媒体との連動をどこまでやるかで決まります。 ■ 先にお渡しできるもの 今のサイトと求人票を見て、応募前に辞退が起きている箇所を指摘した1枚のメモを費用なしでお送りします。ご依頼いただかなくても構いません。 お伺いしたいのは2点です。 ① 直近の応募者は、どの媒体から来ていますか ② 辞退された方の理由で、聞けたものはありますか サイトのURLをこの返信に貼っていただければ、2営業日でメモをお返しします。

通過URLか求人票が返ってくる。この時点で本商談の条件を満たしている

切り返し

返ってくる言葉返し
他社さんは30万円でした30万で作ること自体はできます。ただ今回は、作る前に「応募が止まっている箇所」を特定する工程を入れる想定でして、そこを省くと作り直しになります。その工程だけ先に無償でやりますので、見てから判断されるのが安全です。
今は忙しいので後で承知しました。メモだけ先にお送りしておきます。動かれるタイミングでご覧ください。いつ頃が落ち着かれそうですか。
自分でも作れそう作ること自体は今のツールで十分できます。分かれるのは、何を載せて何を載せないかの設計の方でして。そこだけメモにしてお渡しします。
知り合いに頼んでいるでしたら、そのまま進められて大丈夫です。1点だけ、〔指摘〕は伝えておかれると仕上がりが変わります。

見切り基準:①予算が20万円以下で固定 ②すでに制作会社と契約済み ③要件が完全に確定していて変更不可 ④サイトを作る目的を本人が説明できない。この4つは説明を続けても受注に近づかないので、メモだけ渡して次回連絡時期を取り、撤退します。

06

送信前チェックと計測

送る前にこの順で確認します。上から順に、逆算チェーンの下の段から並んでいます。1つでも「いいえ」があれば、そこが上限になります。

送信前チェック(チェーン順)
確認
0その会社を実際に開いて見たか(案件文を読んだだけは「見た」ではない)
1出す事実は検証可能か。一般論・意見になっていないか
2冒頭3行で、一斉送信でないと分かるか
3「ご興味があれば」「ご検討ください」という出口を渡していないか
4質問は2つまでか。現物の依頼は1点だけか
5指摘した穴は1つだけか(3つ書くとダメ出しになる)
6次に渡すものを名指ししているか。「打ち合わせ」で終わっていないか
7次アクションは、相手の作業1分以内
8実績は1つだけか。未確定の数値を書いていないか
9案件情報を見たまま金額を提示していないか。レンジと振れる理由と確定時期になっているか
10初回に確認する項目(B4′)を4〜5点書いたか
11そのペルソナの第1軸に、提案文の見せ場を割り当てたか
計測 — ゴール定義に沿って3分類で数える

返信率だけを見ると改善点が分かりません。返信を3つに分けて数えることで、チェーンのどの段で切れているかが特定できます。

分類判定切れている段
返信なし条件①② 冒頭と出口/初動の遅れ
相見積もり枠金額・納期の質問のみ条件③④ 事実と当事者化
本商談現物が返ってきた成立

失注は判断軸で分解します。「同業の実績が多い会社に」=①、「予算が合わない」=②、「対応が早かった」=③。③で負けた記録が続く場合、原因は文面ではなく初動と質問の質なので、全文を書き直しても改善しません。

提案ログには reply_type 列を足し、この3値で記録します。「相見積もり枠」が多いのに提案文の冒頭を直しても、何も変わりません。直すのはB3(事実)とB7(成果物)です。

初動 — 速さと準備を両立させる2段構え

比較サイトは通知が全社に同時配信されるため、着信からの経過時間がそのまま③営業担当の対応として読まれます。一方でフェーズ0の調査を飛ばすと上限が相見積もり枠になります。両立させるには分けます。

タイミングやること
〜2時間一次返信。金額は出さない。B1(ミラーリング)+確認したいこと1点だけ。「本日中に、背景を踏まえた形でお送りします」と予告する
当日〜翌営業日フェーズ0の調査を済ませ、7ブロック+B4′の本提案を送る

一次返信で金額を出さないことが要点です。ここで見たまま見積もると、その後どれだけ良い提案を送っても、最初の数字が比較表に残り続けます。

次にやること。実在の案件文か企業URLを1本ください。該当ペルソナのタブに沿ってフェーズ0の調査を行い、事実・成果物・訴求文までを組み上げます。3〜5本回すと、ペルソナごとに「どの事実が刺さるか」の当たり外れが見えるので、そこで各タブのフェーズ0(事実の準備)を更新します。